最新記事
教育

「語学アプリ本当に効果ある?」英大学研究者がユーザー調査で突き止めたこと

App Advantages

2023年12月28日(木)17時05分
フェルナンド・ロセイアギラル(オンライン言語学習研究者、英アーデン大学上級講師)
語学アプリ

PHOTO ILLUSTRATION BY PATHDOC/SHUTTERSTOCK

<「女性は男性より利用頻度が少ないが、1回の利用時間は長い」...フィードバックは役立つか、学習体験はどう評価されているか。世界中で人気が高まる語学アプリの実態調査が行われた>

世界各地で人気の高い語学アプリは、革命的な外国語学習ツールと評判だ。文法を練習できるし、ボキャブラリーを増やして大きな満足感を得られる。ただし、その効果の程には議論もある。特にライティングやスピーキングの場合はどうか。

語学アプリの代表格、Duolingo(デュオリンゴ)とBusuu(ブスー)についての過去の研究では、おおむね肯定的な結果が出ている。だが、この研究の参加者は主に、語学講座で学びながら追加でアプリを活用する人だ。そのため、語学アプリそのものの効果を正確に捉えているとは言えない。

語学アプリユーザーの実像や利用法、考え方を知るため、筆者はしばらく前、ブスー利用者4095人を調査する研究を行った。最大の目的は、アプリによる外国語習得は可能かどうかを突き止めることだ。

ブスーは計12言語を提供し、現在の登録ユーザー数は約9000万人。無料と有料のサービスがある。

筆者の研究によれば、ユーザーの男女比はほぼ均等で、半数以上が18~25歳の若年層だった。5割以上が初心者であると回答し、習得レベルの上昇とともにユーザー割合は減少していた。アプリを利用している理由としては、大半の人が個人的関心や旅行の予定、キャリアまたはプライベートでの目標、外国への留学・移住を考えているためと回答している。

ユーザーの大多数は、利用頻度は週に数回で、1回の利用時間は平均15分間。女性は男性より頻度が少ないが、1回の利用時間はより長い。これは過去の研究でも指摘されていた。

アプリ利用は一般的に、非公式な学習活動と受け止められている。事実、定期的に時間を設けて学ぼうとする(つまり、より公式な学習姿勢の)ユーザーの割合は3分の1で、時間があるときに利用するという人が3分の2を占めた。

語学アプリでのフィードバックは、正解か不正解かの判断だけになりがちだ。それも役には立つが、語学教師や研究者が推奨するように、正しい理由や間違っている理由を説明してくれることはない。ブスーの場合も文法解説はないが、それでもフィードバックへの評価は高く、ユーザーの75%以上が「よい」または「とてもよい」と回答した。

学習体験の満足度も非常に高い。「期待どおり」または「期待以上」と回答した利用者は92%超に上り、86%が同アプリを「とてもよい」または「よい」と評価。実際、ブスーのおかげで学習中の言語の知識が向上したと「思う」または「強く思う」ユーザーは82%以上に達した。

研究結果は、学習者が語学アプリは役に立つと評価していることを示した。語学アプリは時間を使う価値ありと見なされていることは、こうしたアプリが短期間にどれほど進歩したかを証明している。

公式の語学教育がよりコミュニケーション重視に変化するなか、間違えても気にならない場を求めて、学習者はアプリに目を向けている。誰にもミスを知られない環境は、多くの学習者が外国語で話すよう求められた際に陥る「パフォーマンス不安」の解消にある程度、効果的だ。

言い換えれば、語学教師はアプリに脅威を感じる必要はない。むしろ、文法の反復練習にアプリを活用するよう学習者に勧め、貴重な授業時間のより多くを会話に割くべきだ。

The Conversation

Fernando Rosell-Aguilar, Senior lecturer in Spanish and Open Media Fellow, The Open University

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中