最新記事

韓国

韓国消費者の反応は?福島原発処理水の海洋放出に対する賛否は支持政党次第

2023年9月11日(月)17時55分
佐々木和義
福島原発の処理水放出に反対する人々 韓国・ソウル

福島原発の処理水放出に反対する人々 韓国・ソウル 8月26日 REUTERS/Kim Hong-Ji

<福島原発の処理水放出が韓国で波紋を呼んでいる。与野党の攻防、市民の意識の変化、そして水産物市場の最新動向をまとめる......>

東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出が韓国与野党の政争材料になっている。与党・国民の力は容認、野党・共に民主党は反対の立場である。

海洋放出がはじまった8月24日、木浦MBC放送は、処理水の海洋放出に反対する漁民のインタビューを放送した。しかし、インタビューに応じた漁民が野党の政治家だったことが判明した。「自分の子どもに水産物を食べさせられない」とテレビで訴えた漁民は、昨年の選挙で共に民主党から地方選に出馬し、さらには地元選挙区で共に民主党の李在民候補の予備選挙対策共同本部長を務めていた。

与党・国民の力の尹錫悦大統領は7月12日、NATO加盟国会議に出席するため訪れたリトアニアで岸田文雄首相と首脳会談を行った際、処理水放出の点検に韓国専門家を参加させることや放出モニタリング情報のリアルタイムでの共有、放射性物質濃度が基準値を超えた際には即時停止することなどを求め、合意が得られたとして海洋放出を容認する方針を打ち出した。

政府と与党は処理水の公式名称を「汚染水」から「汚染処理水」に改める考えを示している。8月30日の国会予算決算特別委員会で、水産業協同組合会長が「汚染水」を「処理水」に変更すると発表したことについて質問を受けた韓悳洙(ハン・ドクス)首相は、「汚染水が放出されるのではなく、科学的な基準で処理された汚染水が放出される」と回答、「汚染処理水」に変更する意向を示した。

韓首相の答弁に対して、最大野党・共に民主党の李在明代表は、日本が朝鮮半島を統治した時代、朝鮮の姓名を日本風の名前に変えさせたのと同じと批判した。

韓国人の7割が処理水の海外放出に反対

韓国環境団体が発表したアンケート調査によると韓国人の7割が処理水の海外放出に反対しているが、与党支持者は反対を表明していない。

聯合ニュースは9月6日、メトリック・リサーチ社の調査結果を発表した。それによると野党支持者の40.4%が水産物を「食べるのを控える」と回答し、「食べない」という回答も52.3%に上った一方、与党支持者は69.9%がこれまでと同じく食べると回答。

世論調査会社ギャラップの調査でも野党支持者の84%が水産物を食べるのを「ためらう」と答えたが、与党支持者は68%が「ためらわない」と答えている。

一部の野党支持者は、福島産の水産物が韓国市場に輸入されると批判するが、韓国政府は原発事故の発生以降、福島県と周辺海域で水揚げされた水産物の輸入を禁止しており、解除する考えはない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

OPECプラス、2日会合はリヤドで一部対面開催か=

ワールド

アングル:デモやめ政界へ、欧州議会目指すグレタ世代

ワールド

アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴ

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 3

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...痛すぎる教訓とは?

  • 4

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 5

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「…

  • 6

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 7

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    「同性婚を認めると結婚制度が壊れる」は嘘、なんと…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 7

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中