アステイオン

座談会

東京には本当に「地域」がないのか?...サントリー地域文化賞選考委員座談会(中)

2023年09月20日(水)10時42分
佐々木幹郎+田中優子+藤森照信+御厨貴(構成:置塩文)

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藤森 確かに、持続することの意義というのは普通はほとんど目立たない。変えなくていいのだから。だけど、持続することが人間にとって決定的に大事なのだということを、女の人は知っているんじゃないか。

田中 新しいものに飛びつかなくても構わないと。

藤森 新しいものは怪しいと思っている。近代化において「新しいことは良いこと」だったけれど、実はそうでないところが支えてきた。柳田國男のような人たちはそこに関心があったわけですよ。女性のほうが、人間を支えている変わらないところへの感性というか関心が高いのかなと思います。

御厨 女性の「何があっても踏みとどまろうとする力」、これは一見保守的にも聞こえるけれどそうじゃないんだと考えると、女性の選考委員がさらに増えれば選ぶものが違ってくる可能性がありますね。

推薦・選考システムの課題

藤森 田中さん、そういう目で見たときに、選ばれたもののなかに違和感を持ったものはありますか。製鉄なんかどうですか。私はものすごく面白かったんだけど(※5)。

田中 製鉄は面白いと思いました。ものづくりは面白い。しかも、普通は「新しい技術が出てきたからもういいや」となってしまうところを、「そうじゃない」と言うわけですし。そもそも、この賞には新しいものに飛びつくようなものは入ってこないですよね。

御厨 発見されていなかったものが発見される、という賞ですね。

佐々木 ただ、面白みがあるものが候補に挙がってこなかったり、同じような伝統芸能にプラスアルファしたものが多かったりと、年によって差がありましたね。候補を推薦するシステムの見直しもこれからの課題だと思います。

御厨 今は、地域の新聞社とNHKが候補を推薦するシステムですね。

佐々木 今のままでよいのかというのは以前からの課題です。また、推薦する側にも固定観念が生まれてきているなか、それを突破する難しさもあります。

御厨 いま「持続する」意義というお話がありました。地域文化の存続年月で言うと、最初は20年あるいは15年以上持続しているものが対象でしたが、今は「とにかく対象にしないと地域文化が途絶えてしまう」という危機感で出すこともある。

ほんの少し前にできたものにも目を向けざるを得ない状況です。そういうものを授賞対象としていいのかということもまだ検証されていません。

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