コラム

古谷経衡「我、如何にして政党党首たらんと欲す──れいわ新選組代表選挙顛末記」

2022年12月31日(土)12時59分

結句冗談では終わらなかった。山本氏は立候補に必要な推薦人に、私と同じ千葉県松戸市在住で、従前から私の本を読んでくれていた舩後靖彦参議院議員の同意をすぐさま取り付けてくれた。私としてもこの段階で腹は決まっていた。一方れいわには大きく共感するが、足りない部分を感じるところもまた事実だった。

特に外交・安全保障、憲法問題などへの言及が弱いことで、既存の進歩的な支持層以外での尚の広がりを欠くと見做す。れいわが国政でも地方でも更に大きくなりたいのだとすれば、一般的な評価としては政治的には中道方面に支持者を広げなければならいだろう。それしか党勢拡大の余地は無いのである。また、そもそもれいわの既存支持者は、かつての自民党旧経世会系(とりわけ田中角栄──軽武装、経済重視、対米自立)の姿勢を「無自覚的に」トレースしている。ここにはっきりとした保守理論の付与が必要だと思った。

驚くべき自由度

代表選で「あなたたちは昔の自民党に似ている」「あなたたちは、昔の保守(保守本流)にソックリだ、もっと堂々とそれを主張せよ」と訴えれば、実際に私がそう思っていたのと同じように、選挙戦術としては正直インパクトとして「効く」と思った。私が立候補すれば、結果はどうであろうと、必ずこの党の議論は盛り上がり、ひいては民主主義の発展に資するはずだ、そう確信した。私の党首選立候補はこうして確定となった。

驚くべきことであるが、公選法に縛られない党首選挙は、あらゆることが全くのフリーである。かつて、1970年代の自民党総裁選は公選法の縛りがない「自主投票」であることを理由に、札束やポストが飛び交った。勿論、「金銭や物品での買収」は党内規約で禁じられてはいるが、究極的にはマナーの問題であり法的罰則は無い。その気になれば、投票権のある有権者(党員・党友)を買収しても、法的にはなんらお咎めがないのである。そして公選法でがんじがらめになっている選挙では通常みられる「供託金」は0円なのである。立候補するにあたり、金銭的な負担は一切ないのだ。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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