コラム

次期総裁にはプレッシャーが...日銀、「逃げ切り」黒田総裁の大きすぎる置き土産

2023年02月02日(木)11時33分

金利が1%になれば利払いは10兆円

経済動向に反して意図的に金利を低く抑え続けたことの弊害は大きく、金利の引き上げは現実に即した判断と言える。一方、金利が上昇すると、政府や民間企業には相応の影響が及ぶ。政府は1000兆円の借金を抱えており、平均金利が1%に上昇すると、最終的な利払いは10兆円に達するので、その財源を手当てしなければならない。

もし日銀の新体制が金融正常化に向けて大きく舵を切れば、市場の関心は日銀から政府にシフトする可能性が高い。ここで政府が中長期的な財政目標をしっかりと提示できれば、ソフトランディングの道筋が見えてくるが、逆にこうした見通しを示せない場合、政府の財政問題が市場で取り沙汰されることになり、日本国債に対する売り圧力が一段と激しくなるかもしれない。

今回の日銀総裁人事は、今後の日本の金融政策や財政政策に極めて大きな影響を与える。政府と日銀が緊密に連携し、あらゆる方向に対してバランスの取れた説明をしなければ、難局を乗り切るのは難しいだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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