コラム

知られざる数億ションの世界(2)夜、照明がつかない住戸には大型金庫がある

2022年08月10日(水)10時46分

つまり、夜、照明がつかない住戸の多くは「セカンドハウスとして購入され、その日は利用されていない」だけなのだ。

都心のセカンドハウスに大型金庫が必要な訳

都心の数億ション、10億ションは、東京の滞在拠点として利用されがち。そして、住戸内に本体重量500キログラム以上の金庫を設置する所有者が多くなる。 

500キログラム以上となると、業務用の大型金庫だ。その金庫は、マンションに滞在中のために設置される......その理由がおわかりだろうか。

都心生活で必要な「なにか」を収めて厳重に保管したい?

まさか、所持すると法律に触れるもの?などと想像する人もでてきそうなので、急いで答えを明かそう。

金庫に収めるのは、宝飾品や高級時計、クロコなど高級皮革を使用した高価なハンドバッグなど。それらを、2セットとか3セット、場合によっては4セット以上収めることになる。

金庫は大型だが、収めるものは小さく、少ない。が、目が飛び出るほど高額なものばかりだ。

富裕層が夫婦で東京に遊びに来る場合、パーティや友人との会食などが予定されるし、観劇や高級ブティックでの買い物もスケジュールに入れられる。その際、身につけるアクセサリーやバッグ、時計などを複数持って来る。

富裕層は、高級品をいくつも所有しているが、地元でそれらを身につける機会は限られる。その点、東京の銀座や六本木では気兼ねなく身につけることができる。それも、東京に遊びに行く楽しみになる。

だから、宝飾品や時計を数セット持ってくるわけだ。結果として、その多くをマンション内に残して外出することになる。だから、金庫が必要。それも、金庫ごと持ち出すことができないサイズ・重量のものが必要になる。

以上の理由で業務用の大型金庫を設置する、というのが正しい答えである。

そんなことを明かしてしまうと、夜、照明がつかない高額マンション住戸が泥棒に狙われそう......しかし、心配はないだろう。

まず、高額マンションほどセキュリティは厳重で、建物内に忍び込むだけでも至難の業。そして、金庫の中に高級品が収まるのは、所有者がマンションに滞在するときだけ。つまり、夜に照明がつくときだけだ。

照明がつかない夜、マンション所有者は地方の自宅に帰っており、宝飾品や時計も一緒に自宅に戻っている。

とんでもなく大事なものが入っていそうな大型金庫の中は、じつは空っぽなのである。


※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英GSK「ザンタック」、発がんリスク40年隠ぺいと

ビジネス

アストラゼネカ、シンガポールに15億ドルで抗がん剤

ビジネス

BMW、禁止対象中国業者の部品搭載した8000台を

ビジネス

米エクソン取締役全員に反対の方針、米カルパースが表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 8

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story