最新記事

株価

アップルショック、日本株の上昇牽引する「ドライバー」へし折る

2020年2月18日(火)17時21分

東京株式市場を、前日の「GDPショック」に続き、「アップルショック」が襲った。写真はアップルのロゴ。マンハッタンで昨年10月撮影(2020年 ロイター/Mike Segar)

東京株式市場を、前日の「GDPショック」に続き、「アップルショック」が襲った。米アップルが1―3月期の売上高について会社予想に届かない見通しと発表。半導体や電子部品など日本株の上昇を主導してきた「ドライバー」をへし折る形となり、調整ムードを色濃くしている。

アップルは17日、新型コロナウイルス流行が中国での同社製品の生産と需要の両方に影響を与えているため、1─3月期の売上高が会社予想に届かない見通しと発表した。中国での生産拠点がフル稼働に達していないため、スマートフォン「iPhone」の供給が「一時的に制約を受ける」見通しとし「iPhoneの供給制約が、世界中で売上高に一時的に影響する」との見方を示した。

これを受けて、18日の東京株式市場では、TDK、村田製作所、東京エレクトロンなど電子部品株や半導体関連株が急落。昨年後半以降、日本株の上昇は5G関連など将来性が高いグループがリードしてきたが、その主力である「アップル経済圏」とも言われる銘柄群が総崩れとなった。

「いつでも利益確定売りできる株価水準にあったため、外国人投資家が売り急いだ可能性がある。これらは日本株上昇のドライバーであり、上値を試すのが難しくなった」と、三菱UFJモルガンスタンレー証券・チーフ投資ストラテジストの藤戸則広氏は指摘する。

株式市場では、悪材料が具体化した場合「知ったらしまい」という相場格言にあるように、「悪材料出尽くし」や「アク抜け」として反転するケースが多い。

しかし今回のアップルの業績見通し修正については「これまでは心理的な側面が強かった新型肺炎の影響が現実化した格好になった」(岡三オンライン証券・チーフストラテジストの伊藤嘉洋氏)という。

野村証券・投資情報部長の西澤隆氏は「新型コロナウイルスの影響が出始めていると相場も感じ始めているのではないか」と指摘。今後も具体的な材料が出れば、株価を下押すケースが出てきそうだ。

一方、ドル/円が円高に振れていないことが救いになっている。「企業業績は108円近辺を想定為替レートとしている場合が多く、これが基準として意識される」(西澤氏)という。

また流動性相場は継続しているとして、相場のリード役が腰折れしながらも「テクニカル面では中長期的なトレンドが崩れておらず、きっかけひとつで急反発する可能性もある」(岡三オンラインの伊藤氏)との指摘もあった。

三菱UFJモルガンスタンレー証券の藤戸氏は「前日の米国株式市場が休場だったため、アップルの株価など今晩の米株の動向を見極めたいところ。米国の動きを日本の関係者がミスリード(過剰に心配)している可能性もあり、売り方も深追いしにくい様子がある」と指摘。目先は、今晩のアップルの株価動向が注目されると述べている。 *本文中の余分な文字を削除して再送します。

(編集:高木匠)

水野文也

[東京 18日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200218issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中