最新記事

経済制裁

デフォルト認定のロシア国債、債権者はウクライナ戦線同様の膠着状態に

2022年6月28日(火)17時43分
ルーブル硬貨

ロシアの外貨建て国債がデフォルト(債務不履行)と認定されたことで、債券保有者は異例の状況に直面している。写真はルーブル硬貨。2021年3月撮影(2022年 ロイター/Maxim Shemetov)

ロシアの外貨建て国債がデフォルト(債務不履行)と認定されたことで、債券保有者は異例の状況に直面している。ロシア政府には資金があって返済の意思を示しているが、ウクライナ侵攻を巡る制裁によって実行できないという状況だ。

これらの国債は、ただでさえ異例の環境下にある。発行体のロシアが仕掛けた戦争は終息の兆しが見えず、同国は国際金融制度から切り離されている。

残高400億ドル近くに上るロシア外貨建て国債の一部を保有している投資家が、今後直面し得るシナリオを以下にまとめた。

アクセラレーション

債務者が債券の契約を破った場合、債権者は「アクセラレーション」と呼ばれる一括返済を要求できるが、その発動には規則がある。

2026年および36年償還のロシア国債の条件を見ると、発行残高の最低25%を保有するグループが「デフォルト」事由とアクセラレーションを宣言する必要がある。この宣言により、債券保有者は償還期日にかかわらず全残高の返済を要求できる。

ただし、未償還債券の元本総額の「最低50%」を保有する債権者が反対票を投じれば、これを覆すことが可能。同様に、デフォルト事由宣言も撤回できる。

今回問題となった2つの債券について、外国人投資家と国内投資家それぞれの保有比率は明らかになっていない。ロシア国債全般についても同様だ。

訴訟

国債のデフォルトを巡ってロシアを提訴しようとしても、一筋縄では行かないだろう。債券の条件が異例で、あいまいな場合があるからだ。特にロシアが、2014年のクリミア半島併合と18年の英国でのスパイ毒殺未遂を受けて糾弾された後に発行された国債はやっかいだ。

例えば債券は英国法の適用を受けるが、多くの債券は、どの管轄区域で係争を処理すべきかが明記されていない。

このため、米バージニア大学のミトゥ・グラティ法学教授によると、「ロシアはモスクワの裁判所に持ち込むが、債権者はロンドンかニューヨークで提訴しようとする」といった事態も考え得る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中