最新記事

インタビュー

インド映画界には、撮影監督として引っ張りだこの日本人がいる【世界が尊敬する日本人】

2021年8月16日(月)16時40分
大橋 希(本誌記者)

――普通と違うスタイルというのは、いわゆる手持ちカメラで撮るところですか?

そうですね。アメリカに住んでいる頃から手持ちが好きだったので、ボクシングの映画ならやはり手持ちカメラで迫力ある感じで撮りたいと思って。

95%ぐらい手持ちで撮影したが、「圭子はなぜ、そんなに重たいカメラをわざわざ持って撮影するんだ。三脚に載せてやればいいのに......」という感じで、周りのクルーやキャストはみんな驚いていました。

今はデジタルカメラを使っていて、それはフィルムカメラほど重くはない。デジタルだとケーブルなどがいろいろと付いていて、かなり大きさはあるのですが。

でも、例えば歌って踊るようなインド映画だったら、手持ちカメラはちょっと合わない。映画のスタイルやストーリーによって、撮影方法は変えています。

――アメリカや日本に戻ることは考えていないでしょうか。

日本やアメリカでも撮りたいと思っているし、今はドバイの制作会社から声がかかっています。

実は来年春から、日本で撮影する予定があるんです。私がロサンゼルスに住んでいたとき一緒に短編映画を撮った日本人監督の作品ですが、日本で撮影するのは初めてなのでちょっとドキドキしています。

コロナ禍が収まったら、もっといろいろな国で撮影していきたい。

――日本人で女性の撮影監督というのはボリウッドでも目立つ存在だと思いますが......。

ありがたいことに、日本人で女性であることのインパクトは強いと思います。

ただムンバイではたくさんの女性が働いていて、男性と女性が対等な感じ。インドについて何も知らずに来たから、当初はそのことにびっくりしましたが、女性だからどうこうということはなく、働きやすいです。

現在、ネットフリックス・インディアの作品を準備中ですが、クルーも半分くらいは女性かな。

――仕事をする上で、自分は日本人だから......と感じることはあまりない?

いっぱいあります(笑)。例えば、日本人は時間にきっちりしていて、会議があれば開始の5分か10分前に行って、待っていたりする。私もインドに住み始めた頃は、ミーティング開始時間の少し前に行くと誰もいない......ということがよくありました。

でもここに長く住むようになり、自分も遅れて行ったりして、インド化している(笑)。たまに友人に、あなたの日本人らしさはどこへいったの? と突っ込まれます。

ステレオタイプになってしまうが、インドにはとても明るくて、ポジティブで、その日その日を楽しむという人が多い。私がくよくよしていると、アシスタントから「そんなこと気にしないで!」とよく言われます。

それから、日本人は「相手がどう思っているか」「相手はどうしてほしいのか」を気にするじゃないですか。そういうところがたぶん私にもある。

インドの人はみんなおしゃべりが好きで、会議のときもよく話をします。でも私はみんなの話を聞く。

いちばん大切なのは監督が何を言っているのかを聞いて、察すること。監督は自分の色やスタイルを持っていないといけないが、カメラマンの私は、監督がどんな絵や色がほしいのかを察して表現するのが仕事。それによって撮影方法や機材やカメラのムーブメントを変えたりします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米鉱工業生産、4月製造業は0.3%低下 市場予想下

ビジネス

米4月輸入物価、前月比0.9%上昇 約2年ぶり大幅

ワールド

EXCLUSIVE-トルコ、予算削減額は予想上回る

ビジネス

米金利維持が物価目標達成につながる=クリーブランド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中