最新記事

寄稿

教育者でジャーナリストのジョージ・ミラーが「自転車の旅」で見つけた愛すべき東京

2023年3月20日(月)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載

2000年代前半に祖母が他界し、大好きだったいとこのミドリも亡くなった。2017年の夏にはおじのノリユキが亡くなり、私は打ちのめされた。おじは私のお手本だったのだ。大切な人たちともっと多くの時間を過ごせばよかったと、深く後悔し始めた。

日本で暮らしたいと以前から口にしていたが、適切な機会が見つからなかった。ところが、おじを見送った2カ月後、所属する大学の日本キャンパスの教務担当副学部長の求人票を受け取った。

そして、翌年8月に着任した。47歳の時だ。

東京での素晴らしき日々

私にとって日本といえば、九州の有名な段々畑、緑の山々や海辺の景色で、東京という巨大な大都会は想像もつかなかった。

暑い夜や週末には、浅草寺や駒沢オリンピック公園など、大まかな目的地だけを決めて自転車を走らせたが、途中で太鼓の音や歓声に耳を傾けることもあった。その音を頼りにお祭りの場所を探すのだ。道に迷うことは何度もあったが、小さな公園や古い神社、現代建築、そしてたくさんのお祭りと、思いがけない光景をたくさん目にすることができた。全ての旅が冒険だった。

東京イーグルスという世界各国出身の選手から構成されるチームで野球を始めると、多摩川から江戸川、東京の最北の地である北区からはるばる横浜まで、試合には毎回自転車で向かった。

tokyoupdates230316_3.jpg

ジョージ・ミラー氏にとって野球は、東京でさまざまな国籍の人との交流ができる、最大の楽しみの1つとなった

私が東京に来てから数カ月後には妻もやってきて、阿佐ヶ谷のジャズフェスティバルや王子のラッコズピザ、さらには鎌倉の海岸までと、実にいろいろな場所を自転車で一緒に訪れた。

自転車の旅は爽快だった。

自転車の高さから、そのスピードで日本を見ることで、全てのもののつながりを深く理解することができた。標識や建物を認識するようになり、地形もすぐに覚えた。中目黒から代官山に向かう途中にあるような急な坂を回避する近道も覚え、自転車でなければ発見できないような新しいお気に入りの場所も見つけた。自由が丘もその1つだ。イーグルスの試合の帰りには、アフリカリクガメのボンちゃんとも出会った。天皇陛下の一般参賀など、立ち寄った先で取材を受け、妻と一緒にテレビに映ったことも何回かある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中