最新記事

核・ミサイル開発

金正恩はプンゲリ核実験場を閉鎖できるか? 安全性、実効性に疑問符

2018年5月18日(金)08時17分

5月15日、北朝鮮の核実験場閉鎖は、予想以上に難しい作業だ。写真は核開発技術者と話す金正恩氏。2016年9月KCNA提供(2018年 ロイター/KCNA)

北朝鮮の核実験場閉鎖は、予想以上に難しい作業だ。トンネル崩壊作業に失敗すれば、放射性デブリ(ごみ)が拡散しかねない。放射性物質を埋めたとしても、再び掘り起こされて兵器に再利用される可能性が残る。

また、たとえ実験場の全トンネルを破壊したとしても、北朝鮮のエンジニアが新たに核実験を行う場合、新しいトンネルを掘れば済む──。

豊渓里(プンゲリ)にある核実験場のトンネルを、爆発物を用いて来週崩壊させると北朝鮮が表明したことを受けて、軍縮専門家はこのような懸念を提示している。

北朝鮮政府は、破壊作業を国際メディアに公開すると公言しているが、技術査察官を招いていないため、実際どれほどの実効性が担保され、安全性が確保されるのか、軍縮専門家や核科学者は疑問視している。

昨年9月に北朝鮮が過去最大の核実験を実施した後に、同実験場の一部で地盤が不安定化しているとの報道もある。

さらなる爆破措置は不必要なリスクを招く恐れがある一方、北朝鮮は、より安全で信頼性の高い方法で閉鎖することができると、ソウル大学核原子力工学科のソ・ギュンリョル教授は指摘する。

「爆破は理想的なやり方ではない。爆破ほどの派手さはないが、コンクリートや砂、砂利でトンネルを埋めるのが最善だ」と同教授は述べた。

北朝鮮が水爆だと主張する9月の実験も含め、過去の核実験の大半が行われた複合トンネルの1つでは、未だに高濃度の放射線が検出されていると、同教授は付け加えた。

だが、地下核実験場用のトンネルやシャフトには一般的に、放射性物質が外に漏れ出す前に、核爆発の爆風によって閉鎖されるよう設計されている。北朝鮮は6回の実験を行う中で、放射線漏れを防ぐ方法を習得したとみられている。

「うまくやれば、放射線が外に放出されるリスクはない。だが問題は、トンネルが再使用不能な状態で閉鎖されるかどうかだ」。核危機グループのディレクターで、オバマ前米政権で核不拡散担当の特別補佐官を務めたジョン・ウォルフスタール氏はそう語る。

「トンネル数本の破壊をもって、将来的な核実験再開に物理的障壁ができたとわれわれが考えることだけが、考えられるリスクだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー

ワールド

焦点:中国農村住民の過酷な老後、わずかな年金で死ぬ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中