最新記事

私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】

「中国人」とひとくくりにする人たちへ──日本との縁を育んできた中国人たちの物語

WHAT THEY LOVE ABOUT JAPAN: CHINESE STORIES

2020年1月27日(月)19時30分
森田優介(本誌記者)

新型コロナウイルス肺炎が猛威を振るい、中国・中国政府だけでなく「中国人」に関してもさまざまな言説が飛び交う今だからこそ(2020年1月24日、上海) Aly Song-REUTERS

<国や国民性を主語に語り、レッテル貼りをしてしまいがちなのはなぜか。それは個人的なつながりがないから。「人を知る」視点を提供するべく、日本のカルチャーに惚れ込んだ中国人たちの生きざまを紹介する特集を企画した>

2015年の春、当社から『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(趙海成著)という本が出版された。表紙に掲げたのはこんなコピーだ。「過去最悪ともいわれる日中関係のなか、彼らはどう生き、何を思うのか」

中国全土で反日デモの嵐が吹き荒れても、13億人の中国人が1人残らず日本を嫌っていると考える人はいないだろう。

それでも、当時は日中双方で相手国への印象が過去最悪という調査結果が出ていた時期。漫画『ワンピース』に夢中な若者や、北海道旅行を楽しむ家族はいたにもかかわらず、「中国人は反日」という言説が広まっていた。『在日中国人33人』の編集担当だった私は、だからこそ出す意義のある本だと考えた。

5年がたった今、過去最悪の関係に陥っているのは日本と韓国だ。どれだけソウルで反安倍デモが行われ、日本製品不買運動が続いていたとしても、韓国人が全員「日本嫌い」であるはずがないが、冷静な声はかき消されてしまう。

もちろん、日本の漫画が好きでも日本を好きとは限らない。その点は注意が必要だが、国や国民性を主語に語り、レッテル貼りをしてしまいがちなのはなぜか。

理由の1つは、リアルな人との接点がないことだろう。わずか数時間のフライトで行き来でき、歴史的にも交流が盛んな隣国だが、中国人や韓国人の知人・友人が1人もいないという人は珍しくない。

magSR200127chinese-into-sub2.png

2月4日号「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集の冒頭

そこで本誌では「人を知る」視点を提供するべく、2週にわたり、日本のカルチャーにほれ込み、日本の地を踏み、日本との縁を育んできた中国人(今号)と韓国人(次号)を取り上げる。彼らの生きざまを知ることが、隣国とのつながりを再発見し、また自らの国を見つめ直すきっかけになるだろう。

とりわけ中国とは、「訪日旅行が人気」などの形で中国人が日本に向ける好意は知られていても、いまだに日本人で中国によい印象を持っている人は15%しかいないという不均衡な関係にある(2019年9月の日中共同世論調査)。

東京で活躍する声優から上海で日本式の保育園をつくった母親まで、一人一人の物語に耳を傾ければ、何かが見えてくるかもしれない。

たとえ彼らの「日本の●●を好きな理由」が、私たちには当然に思えることだったとしても。

<2020年2月4日号「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集より>

「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」より
日本一「日本」を伝える中国SNSの女神「林萍在日本」
「保育園」のない中国に、100%日本式の保育施設をつくった上海女性
中国人コスプレイヤー、同人誌作家、買い物客はこんな人たち(コミケ97ルポ)
横浜の和菓子店、上生菓子に一目ぼれした中国人店主の「おんがえし」


20200204issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月4日号(1月28日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集。声優/和菓子職人/民宿女将/インフルエンサー/茶道家......。日本のカルチャーに惚れ込んだ中国人たちの知られざる物語から、日本と中国を見つめ直す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中