最新記事

インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチン接種者は新型コロナの陽性になりにくかった...... 米研究

2021年3月26日(金)16時30分
松岡由希子

インフルエンザワクチン接種者が新型コロナで陽性となる確率は、非接種者に比べ24%減少していた...... scyther5-iStock

<ミシガン大学医学大学院の研究チームが、インフルエンザワクチンの接種と新型コロナウイルス感染症との関連を調べた...... >

2019/2020年シーズンのインフルエンザワクチン接種者は、非接種者に比べて、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性になりにくく、重症化しづらかったことがわかった。

米ミシガン保健福祉省(MDHHS)では、2020年3月10日から7月15日までに2万7201名が新型コロナウイルス感染症の検査を受け、4.5%に相当する1218名が陽性と診断された。陽性者のうち41.5%の505名が入院し、7.4%にあたる90名が死亡している。

入院が必要となる確率が低く、入院期間も短かった

ミシガン大学医学大学院の研究チームは、これらの陽性者を対象に、インフルエンザワクチンの接種と新型コロナウイルス感染症との関連を調べた。なお、インフルエンザワクチン接種者は全体の47.8%にあたる1万2997名で、非接種者は1万4204名であった。

米国の医学雑誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・インフェクション・コントロール(AJIC)」で2021年2月22日に発表された研究論文によると、インフルエンザワクチン接種者のうち新型コロナウイルス感染症の検査で陽性と診断されたのは4.0%にあたる525名であった一方、非接種者では4.9%にあたる693名であった。

新型コロナウイルス感染症の検査で陽性となる確率は、非接種者に比べ、インフルエンザワクチン接種者で24%減少している。年齢、性別、人種、BMI、基礎疾患、喫煙状況などを考慮しても、インフルエンザワクチンの接種と新型コロナウイルス感染症との関連が認められた。

また、インフルエンザワクチン接種者は、入院が必要となる確率が非接種者よりも低く、入院期間も短かった。ただし、死亡率では両群に有意な差は認められなかった。

「免疫系に直接、生物学的効果をもたらしている可能性がある」

インフルエンザワクチンの接種と新型コロナウイルス感染症との関連についてのメカニズムはまだ解明されていない。

研究論文の責任著者でミシガン大学医学大学院のマリオン・ホフマン・ボーマン臨床准教授は、「インフルエンザワクチン接種者は、ソーシャルディスタンスの確保など、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインを遵守しているのかもしれない」と指摘する一方で、「インフルエンザワクチンが、新型コロナウイルスに対抗する免疫系に直接、生物学的効果をもたらしている可能性がある」との見解も示している。

ブラジルでも、同様の研究結果が明らかとなっている。スイス・バーゼル大学やブラジル・サンパウロ大学らの研究チームは、ブラジルの新型コロナウイルス感染症の陽性者5万3752名を対象に分析し、2020年12月11日、「インフルエンザワクチン接種者は、新型コロナウイルス感染症により集中治療室での治療が必要となる確率が平均7%下がり、死に至る確率が16%下がった」との研究論文を発表している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中