最新記事

中国

中国が崩壊するとすれば「戦争」、だから台湾武力攻撃はしない

2022年1月20日(木)19時57分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

もう少し時間が経って中国軍が少しは強くなり、すぐには敗戦しないで、米中間の戦争が長引いた場合のシミュレーションが重要でかつ深刻だ。

米軍はまずマラッカ海峡などの航路を海上封鎖し、中国の輸出入を封じてしまうだろう。

中国は石油の70%、天然ガスの40%など、エネルギー源を輸入に頼っている。しかもその多くはマラッカ海峡を通って運搬されている。もし海上封鎖されたら、中国は経済的に決定的な打撃を受ける。特に東海岸沿いの都市へのダメージは激しく、いつ直接攻撃されるか分からないだけでなく、物価が高騰したり、不動産価格が急落したりなど、激しい社会不安を巻き起こすことは避けられない。

社会不安ほど一党支配体制を揺るがすものはほかにないと言っても過言ではない。中国共産党にとっては恐ろしい現象だ。

もしそのような事態が来れば、中国共産党による一党支配体制は、やはり崩壊するだろう。

したがって、それを避けるために、中国は少なくとも2035年までは自ら台湾に戦争を仕掛けることはないのである。

しかし万一にもそのような事態になった時のために、南シナ海の埋め立て地を米軍に対峙する軍事拠点として堅固なものにしようとしている。

またパキスタン回廊などを確保しながら「一帯一路」構想を強化するのも、海上封鎖された時のための「エネルギー源の輸送路を確保するため」である。

中国は現在でもすでに世界の太陽光パネルの58%強を生産しているが、今年1月3日のコラム<ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地>に書いたように、習近平は新疆ウイグル自治区を太陽光パネルの基地にするという戦略で動いている。

これはエネルギーの国家安全保障を狙った線上にある習近平の長期戦略で、ウイグル問題と台湾問題とは、このように「エネルギーの国家安全保障」という視点において繋がっているのである。

台湾周辺での軍事演習は中国国内のナショナリストへのガス抜き

それならなぜ、あんなにまで激しい軍事演習を台湾周辺の海空で行っているのかというと、一つには独立派への威嚇ではあるが、もっと大きな要因は、実は中国国内、特にネット空間にある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中