最新記事

ウクライナ

将官が次々と死亡し暴徒と化すロシア軍

Winging It’: Russia Is Getting Its Generals Killed on the Front Lines

2022年3月23日(水)16時56分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

だが関係者によると、ロシア軍の指揮官は戦術的なミスも犯している。3月上旬にウクライナのハリコフ市郊外でビタリー・ゲラシモフ少将が殺害された後、ウクライナ情報当局は、ロシアの極秘情報専用通信機器の故障に不満を表す無線通信を傍受したことを発表した。ゲラシモフは、ロシア軍幹部ワレリー・ゲラシモフの甥とみられている。

約1カ月に及ぶウクライナ侵攻は、30年以上前のソビエト連邦崩壊以来、ロシア軍にとって最大規模の派兵となるようだ。1980年代のソ連による9年間のアフガニスタン戦争では、ピーク時に11万5000人の兵士がいた。チェチェンでの2回の戦争におけるロシア軍の戦力は10万人をはるかに下回っていた。ロシアは2008年にジョージア(旧グルジア)に、2014年にウクライナに、さらに少数の部隊を派遣し、時には軍服を着用しない部隊を使ってその動きを隠した。

侵攻4日目で戦死

アメリカはロシア人指揮官の死亡を確認していない。しかし、アメリカの当局者は同時に、テキサス州とほぼ同じ大きさの国であるウクライナに対する侵攻の規模と複雑さ、そしてロシア軍の死者が多く、隣国ベラルーシの遺体安置所が死者で溢れかえっていることを指摘した。

「この規模の侵攻となると、上級司令官、それも将官を現地に派遣するのは理にかなっている」と、米国防当局の高官は21日、匿名を条件に、戦況の率直な評価を記者団に語った。「ロシア軍にとって、このような規模は過去に例がない」

この国防当局高官によれば、ロシア軍は伝統的に、欧米の軍隊より厳格なトップダウンの指揮系統を持つため、下士官の柔軟性がはるかに低く、戦術的な意思決定の細部に至るまで、上級士官が関与しているという。「どのように組織され、どのように指揮するかという点では、大きな違いがある」

現在のところ、ロシアがその死亡を公表した指揮官はアンドレイ・スホベツキー少将のみだ。チェチェンおよび旧グルジアでの戦争と、2014年のクリミア併合を経験したベテランだが、ウクライナ侵攻からわずか4日後に戦死した。またウラジーミル・プーチン大統領は、情報漏えいと燃料浪費を理由に、ロシア国家親衛隊の副隊長を解任したと報じられる(ロシア国家親衛隊は、ロシア連邦軍とは別のロシア連邦政府に属する国内軍組織であり、大雑把に言えばアメリカの州兵に相当)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米制裁は「たわ言」、ロシアの大物実業家が批判

ワールド

ロシアの石油・ガス歳入、5月は3分の1減少へ=ロイ

ビジネス

中国碧桂園、清算審理が延期 香港裁判所で来月11日

ワールド

米声優、AI企業を提訴 声を無断使用か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中