最新記事

韓国

コロナ禍明けて明暗分かれた韓国企業 デリバリーのベミン、ホンダコリア、大韓航空

2023年6月18日(日)09時45分
佐々木和義

大韓航空機とアシアナ航空機

大韓航空機。後ろに見えるのはアシアナ航空機。Photo by Jun Seita Attribution 2.0 Generic (CC BY 2.0)

旅行客激減に迅速に対応できた大韓航空

大韓航空は2022年、過去最高となる13兆4127億ウォンの売上を計上。営業利益も過去最高の2兆8836億ウォン(約3050億円)を記録した。売上は2019年の11.6%増、営業利益は14倍だ。主な要因は貨物である。

国際航空貨物の輸送は旅客便と貨物便が分担するが、パンデミックによる国際旅客の中断で貨物便の需要が供給を上回る状況になって国際貨物輸送費が高騰した。大韓航空は、国際旅客が激減した2020年9月に旅客機2機の座席や配線を取り外して貨物機に改造。2021年7月までに旅客機16機を貨物機に切り替えた。

各国の主要航空会社は旅客便のみを運航し、貨物便はグループ会社が運航している。例えば日本航空は、小口貨物は旅客便の貨物室でも輸送するが、大口貨物や大型貨物はJALカーゴが輸送する。ルフトハンザやエールフランスなども同様で、ルフトハンザカーゴやエールフランス-KLM-マーティンエアーカーゴが大口貨物輸送を担っている。
JALカーゴが便を増やそうと思っても機材調達には相応の時間とコストがかかるし、かといって日本航空の機材を借りて貨物機に改造することはできない。旅客と貨物が同一会社の大韓航空は国際旅客の中断で余った機材を容易に転用できたのだ。

大韓航空のほか、アシアナ航空やエアカナダ、フィンエアーなども旅客機を貨物機に改造したが、エアカナダは2機、フィンエアーは3機のみである。

企業統合には暗雲が......

大韓航空は国際旅客が再開した2022年後期から23年1月に改造機を旅客便に戻して国際便に投入した。旅客機7機を貨物機に改造したアシアナ航空は、安全を考えて復元機材は当面、運航距離が短い日本路線などで使用するという。

多大な利益を得た大韓航空は経営不振の国内キャリアナンバー2のアシアナ航空の買収に着手したが 5月17日、欧州委員会(EU)は欧州と韓国を結ぶ路線が独占になるとして懸念を示した。
中国、英国、オーストラリア、韓国など11カ国は企業結合を承認したが、EUのほか米国と日本も承認していない。米国、EU、日本のいずれかが非承認の決定を下すと両社の合併は事実上、不可能になる。

コロナ禍後、ホンダコリアは順調に滑り出したが、ベミンと大韓航空は大きな壁に阻まれている。

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米高官、中国と北朝鮮巡り協議 強制送還への懸念表明

ワールド

トランプ氏、石油業界幹部に環境規制破棄を明言 10

ビジネス

英中銀、近いうちに利下げとの自信高まる=ピル氏

ワールド

ロシア軍の侵攻阻止可能、同盟国の武器供給拡大で=ウ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 5

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    自民党の裏金問題に踏み込めないのも納得...日本が「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中