最新記事

南シナ海

中国が南シナ海でフィリピン艦船に放水、進路妨害 領有権巡り非難合戦

2023年8月9日(水)18時23分
大塚智彦
放水を行う中国海警局の船舶

手前のフィリピン巡視船に向けて放水を行う中国海警局。The Telegraph / YouTube

<放水銃での威嚇と進路妨害。いつ武力衝突になっても不思議はない>

南シナ海の南沙諸島にあるフィリピンが実効支配する環礁アユンギン礁。その付近の海上で中国海警局船舶がフィリピン沿岸警備艇の巡視船などに対し放水銃で進路を妨害し、フィリピンと中国両国が互いを非難するなど緊張が高まっている。

比沿岸警備隊(PCG)は8月6日、アユンギン礁(英名セカンド・トーマス礁)に補給物資を運ぶ民間のチャーター船と警戒のため同行していたPCGの巡視船「マラブリゴ」に中国海警局船舶が進路妨害を行ったと発表した。

 
 
 
 

それによると5日午前9時ごろ、アユンギン礁近くの海域で比座礁船「シエラ・マドレ号」に食料や生活物資を運ぶ補給船とPCG巡視船の2隻に対し、複数の中国海警局船舶が急接近。並走しながら放水を浴びせて進路妨害を行った。

この放水の状況は比巡視船側が撮影しており、フィリピンのメディアなどに掲載されたほか、ネット上には中国側が上空から記録したとする補給船に対する放水の動画も公開されている。

比外務省が中国に厳重抗議

放水による進路妨害が危険な行為であることや事件が起きた海域がフィリピンのEEZ内であることなどから国際法にも違反するとして比外務省は6日、駐比中国大使を呼んで厳重に抗議した。

比外務省報道官は「アユンギン礁はフィリピンのEEZ内にあり、国連海洋法条約によって確認された主権と管轄権を有している」としたうえで「中国は海警局船舶の行動を抑制し、同海域でのフィリピンの主権を尊重し、航行の自由を妨げるべきではない。さらに今回の違法行動に関与した関係者に適切な対応を取ることを要請する」と抗議した。

中国は座礁船の撤去を要求

こうした比側の抗議に対して中国は7日、「南沙諸島海域にフィリピン船舶が不法に侵入した。このため法律に従って建設資材などを運搬するフィリピン船舶を阻止した」として海警局船舶の行動を正当化した。

さらに中国はアユンギン礁の座礁船「シエラ・マドレ号」を撤去し、以前の状況に戻すことをフィリピン側に要求した。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラの「ギガキャスト」計画後退、事業環境の逆風反

ワールド

ロシア、ウクライナで化学兵器使用 禁止条約に違反=

ビジネス

ドル一時153円まで4円超下落、再び介入観測 日本

ワールド

米、新たな対ロシア制裁発表 中国企業を狙い撃ち
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中