最新記事
ロシア軍

ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

Russian Troops Massacred by Fellow Soldiers

2024年5月8日(水)18時01分
ブレンダン・コール

ウクライナで軍功をあげ勲章を受けるロシア兵(ロシア国防省が2022年5月10日に公開した映像より) EYEPRESS via Reuters Connect

<ロシア軍内で兵士が兵士を無差別大量に殺害する事件が相次いだ>

ロシアの警察は、ウクライナ東部で6人の仲間を射殺した容疑でロシア軍兵士を捜索している。だがロシア軍内の大量殺人はこれが初めてではない。ちょうど同じ頃、手榴弾を兵舎に投げ込み、兵士7人を殺害したロシア軍将校の裁判も始まった。

【動画】集合したロシア部隊の頭上に降り注ぐ「クラスター弾」の強烈な爆撃...ATACMSの直撃を受けた瞬間映像を公開

ウラジーミル・プーチン大統領による本格的なウクライナ侵攻が始まって以来、ロシア軍兵士の士気が低下していることは繰り返し指摘されている、理由は、訓練や装備に対する不満や上官への反感などさまざまだ。ロシア軍は、6カ月間従軍すれば釈放するという契約で受刑者を入隊させ、兵士の数を増やしてきた背景もある。

 

警察がいま追っているのは、ユーリ・Gとよばれる57歳の元受刑者の二等軍曹だ。テレグラム・チャンネル「バザ」によれば彼は、ロシアが一方的に併合を主張するドネツク人民共和国で、5月4日に榴弾砲大隊の兵士6人を射殺した後、逃亡した。

サイレンサー付きのAK-12アサルトライフルと弾薬を所持している可能性があり、警察はロシアの国境地帯であるロストフ、ベルゴロド、ボロネジを捜索している、とバザをはじめとするロシアのニュースサイトが伝えている。

狂気の沙汰

手榴弾で仲間を殺したとされるドミトリー・ロボビコフ軍曹は2023年1月13、14日に行われた新年祝賀会の最中に部下7人を殺害し、少なくとも10人を負傷させた罪に問われている。

コメルサント紙が報じたところでは、ロボビコフは部隊の様子を確認するために兵舎に行き、そこでRGD-5手榴弾を取り出してピンを抜いてから、兵士の一人にピンを元の位置に戻すよう命じた。そのときに何か不満を感じたようだ。

命令を受けた兵士は、やり方を習っていないと答えた。するとロボビコフは兵士を罵り、廊下に出た。そして別の小隊の兵士が寝ていた隣の部屋に手榴弾を投げ込み、ガスボンベを爆発させ、7人を死亡させたという。

ロボビコフは拘束され、殺人、殺人未遂、故意による身体的危害の加害、故意による器物損壊、爆発物の不法所持で起訴された。

コメルサント紙が報じたところでは、事件の場所は特定されていないが、ロボビコフの裁判は、ウクライナと国境を接するロシアのヨーロッパ地域を管轄する西部地区軍事裁判所の陪審員によって審理されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中