コラム

196分の1を選んだ「外国人財」を大切に...来日した優秀人材が国を救う

2023年07月05日(水)16時10分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
「外国人財」のイメージ

KYONNTRA/GETTY IMAGES

<日本が「世界第3の経済大国」の地位を守るには「外国人財」の活躍が不可欠>

コロナ禍も落ち着き、国境も開放された現在、観光や就労で来日する外国人も増えている。日本人は人財(私はあえてこう書く)の重要性を再認識する必要があると思う。少し前、とある企業をグローバル教育の研修(異文化コミュニケーション研修やダイバーシティー研修など)の講師として訪れた際、日本人以外の外国籍の社員も参加していることに感銘を受けた。

他の企業では東アジア系の社員が参加する例はあったが、この企業では東アジア系以外の社員も参加していて、斬新な取り組みだと感じた。担当者は「弊社は日本人・外国人問わず、必ず同様な教育をするようにと心がけている」と語っていた。

その理由を尋ねると、国籍関係なく人によって気付く点が異なる場合が多々あり、いずれその点が新たな発想に変わると期待しているとのこと。確かにその考えは納得できる。

私自身もかつて外国人として、日本の会社で同僚との関係改善を図るために会話に参加しようとしたことがあった。しかし、なかなか受け入れられなかった。そこで、私はそのときどうしたらいいか考えてみた。

実は私はなぜ日本が経済大国となったのかに興味があり、大手企業や中小企業の名前を聞くたびにその背景を調べることが好きだった。今もそうしていて、その場で調べたり、会社名をメモし、時間をつくって後で徹底的に調べたりもする。その過程で、日本の真の成長姿勢が見えてきた。例えば外国のものを含め、新しい文化を常に取り込んできたこと。戦後は欧米を中心にたくさん学び、信頼の「日本製」をつくった。白物家電だけでなく、私が営業して売った工業用品や、取引先の紙・ティッシュ製品なども紙質が抜群にいい。

同僚との会話を盛り上げるために、自分が調べた情報を少しずつ話してみたが、最初はあまり受け入れてもらえなかった。「外国人のくせに知った顔をして」とも言われた。しかし親切な先輩は「よく知っているね」と応援してくれて「シャハランは日本好きだからこそ、たくさん日本や日本企業について調べているんだね」と褒め続けてくれた。

やがて他の先輩も徐々に話を聞いてくれるようになり、私も少しずつ会社で自分の立ち位置を見つけることができた。

仲間外れにされた私は先輩の支えもあり、一生懸命仲間をつくった。しかし私の努力は一部の人には面白くなかったかもしれない。そう考えると、時にはむなしさを感じた。これは日本において外国人が生活し、働く際の課題だ。かつての私のように、仲間になれないまま働き続けなければならず、苦しみや疑問を抱く外国出身の人々はさまざまな役職や立場で多いだろう。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な

ビジネス

米年内利下げ回数は3回未満、インフレ急速に低下せず

ワールド

イラン大統領ヘリ墜落、原因は不明 「米国は関与せず

ビジネス

FRB副議長、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 5

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story