コラム

医療逼迫?政府与党は直ちにコロナ禍の医療緊急事態を改善せよ

2020年12月30日(水)16時06分

コロナ対応以外の医療機関は一部経営的には厳しくなっているが、通常の医療体制においては設備・人員に余裕がある機関も多い。

戦後日本は、医師不足を多くの民間開業医に頼った。結果、海外と比較して民間開業医が多く、医師・設備が分散して存在し、高度医療や緊急事態における柔軟な地域医療連携ができない。この歪みを解消すべく、近年厚労省は、様々に地域医療の役割分担を促進する制度改定をおこなってきたが、地域住民や医療機関の反対等で改革は停滞してきた。その矛盾が一気に吹き出た状況だ。

医療崩壊を防ぐ為に国はこれまで何をしたか?

医療崩壊の危機は、思えば3月には今より遥かに患者数が少ない中でも叫ばれていた。それからこれまでの期間、国はいったい何をしていたのか。

これまでの流れは以下の通りだ。

1/28:政令公布←患者・疑似症患者に対する入院措置

2/1:施行

2/14:無症状病原体保有者への措置が適用

3/10:「新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案」が閣議決定、13 日に成立、同日公布

3/26:欧州株の流入を受けて「まん延のおそれが高い」として新型コロナに対して感染症法上措置の追加を閣議決定(交通の制限または遮断、建物への立ち入り制限等や健康状態の報告の努力義務を課すことが可能に)。

1月の新型コロナウイルス発生直後に、国会の審議を経ていては緊急対応できないということで閣議決定で進められる「政令」で新型コロナウイルスを「指定感染症」に時限的に指定して、SARS等と同等の2類に「相当」するという判断をした。

「指定感染症」とは、4類以下の感染症法上の感染症、または感染症に位置付けられていない感染症について、1類〜3類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症に対して行う措置を時限的に準用することができるようにするための感染症法上のカテゴリーだ。

例えば新型コロナウイルスは2類「相当」として時限的に準用されていて入院勧告の人権制限も、都道府県の実情に応じて知事が判断できるという「できる規定」になっている。

いわば、国は新型インフルエンザの特措法の附則の改正をしただけ、感染症法に至っては改正せず措置内容の追加のみ、良く言えば現場で柔軟に運用は可能、悪く言えば知事と都道府県医療保健機関に任せっぱなしの状態だ。

知事として「お願い」は「できる」が強制力を持つ法的根拠は(特に緊急事態宣言解除後は)ない。「3密避けて」「ステイホーム」「5つの小」等、言葉遊びとの批判もある小池知事だが、飲食店にも医療機関にも協力要請を「お願い」することでしか闘えないのが現実だ。

プロフィール

安川新一郎

投資家、Great Journey LLC代表、Well-Being for PlanetEarth財団理事。日米マッキンゼー、ソフトバンク社長室長/執行役員、東京都顧問、大阪府市特別参与、内閣官房CIO補佐官 @yasukaw
noteで<安川新一郎 (コンテクスター「構造と文脈で世界はシンプルに理解できる」)>を連載中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

社会保険料負担の検討、NISA口座内所得は対象外=

ワールド

欧州で5G通信網の拡大を=ショルツ独首相

ワールド

訂正中韓外相が会談、「困難」でも安定追求 日中韓首

ビジネス

野村HD、2030年度の税前利益5000億円超目標
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story