コラム

北京五輪が韓国与党の大ブレーキに?韓国大統領選まであと1カ月

2022年02月10日(木)22時02分

先頭でゴールした韓国の選手がビデオ判定で失格に。後ろの2人は中国選手(2月7日、男子ショートトラック1000メートル準決勝)Evgenia Novozhenina-REUTERS

<第1回のテレビ討論後は、野党・尹錫悦の支持率が上昇。与党・李在明は、韓国人の反中感情を煽る「事件」が相次いだ北京五輪の影響を懸念する>

3月9日の韓国の第20代大統領選挙まで残り1か月を切った時点で尹錫悦(ユン・ソギョル)候補の支持率が上昇傾向を見せている。

韓国の世論調査機関「リアルメーター」が2022年2月7日に発表した調査結果によると、野党「国民の力」の尹候補の支持率は43.4%で、1週間前の40.2%より3.2ポイント上昇し、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補(38.1%)との差を広げた。

一方、ダークホースと言われている野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)候補の支持率は10.3%から7.5%と1週間に2.8ポイントも下落した。

kim20220212183601.jpg
出典:韓国の世論調査会社、リアルメーターのホームページより筆者作成(最近の調査日:2022年2月7日)

今回の尹候補の支持率上昇には、李候補の婦人のキム・ヘギョン氏の過剰待遇疑惑と法人カード流用疑惑以外に、2月3日に開かれたテレビ討論会もある程度影響を与えた可能性がある。韓国与野党4人の大統領候補による初のテレビ討論会で尹候補が予想以上に善戦したからだ。

保守系インターネットニュースサイト「ニューデイリー」の委託を受けて、(株)「ピープルネットワークスリサーチ(People Networks Research)」が実施(2月4日~5日)した調査によると、3日のテレビ討論会について40.1%が「国民の力」の尹候補を勝者(「よくやった」と評価した割合を比較)にあげた(李候補は34.1%、安候補は11.2%)。

男女別には男性の42.0%、女性の38.3%が尹候補が「よくやった」と評価した。一方、李候補が「よくやった」と評価した割合は男女共に33.9%に留まった。

年齢階層別に「よくやった」と評価した割合は尹候補の場合70代が56.8%で最も高いことに比べて、李候補は40代が43.2%で最も高く、年齢階層により支持する候補が分かれた。

kim20220212183602.jpg
出典:ニューデイリー世論調査:TV討論より筆者作成
https://www.newdaily.co.kr/site/data/html/2022/02/06/2022020600044.html

他に、2月3日の大統領選のテレビ討論会以降実施された多数の世論調査でも尹候補の支持率が高いという結果が得られた。特に韓国社会世論研究所(KSOI)が2月7日に発表した調査結果によると、テレビ討論会以降、イメージがよくなった候補は尹候補が40.9%で、李候補(31.0%)と安候補(12.0%)を大きく上回った。

3日のテレビ討論会は2時間にわたり行われ、各候補は不動産、外交安保、年金改革、雇用、自営業者支援等について議論を交わした。この中で李候補と尹候補の意見が明確に分かれたのは不動産と外交安保分野であった。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米デル、AI対応製品の品揃え強化へ 新型PCやサー

ビジネス

国債金利、金融政策だけでなく様々な要因で決まる=官

ワールド

国債金利、金融政策だけでなく様々な要因背景に市場で

ビジネス

グーグル、フィンランドのデータセンターに10億ユー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 10

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story