コラム

「岸田新首相は中国に圧力を」英保守党重鎮が訴え

2021年10月04日(月)21時30分

その環境にしても問題が非常に大きい。

報告書によると、中国の国内総生産(GDP)は世界の17%、人口の18%しかないのに、二酸化炭素(CO2)排出量は28%だ。中国の電力の60%が石炭火力によって発電されているからだ。1ドル稼ぐのに排出するCO2はEUの約3倍。国際機関、グローバル補助金イニシアティブ(GSI)の試算では中国の化石燃料への補助金は1年に約1千億ドル(約11兆1150億円)にのぼる。

ミャンマー民主化を求めてきた団体ビルマ・キャンペーンUKの「ダーティー(汚れた)リスト」によると、イギリスや欧州諸国、カナダの機関投資家から投資を受けている複数の中国企業がクーデターを起こしたミャンマー軍部の武装化と資金調達に深く関わっているとされる。特に注意を要するのは、中国が民間企業のデュアルユース(軍民両用)技術を軍事目的に利用する戦略を描いていることだ。

アリババやテンセントも関与

香港ウォッチは次の4タイプの中国企業を精査し、株や債券の売却を検討すべきだと提案している。

(1)米政府のブラックリストに掲載されている企業
(2)新疆ウイグル自治区での人権侵害に加担している大手テクノロジー企業
(3)国有企業の最大の出資者である国営銀行
(4)化石燃料を扱う巨大企業

大手テクノロジー企業は新疆ウイグル自治区での監視国家の構築、「職業技能教育訓練センター」と呼ばれる事実上の再教育強制収容所の建設、人権弾圧に関与していると香港ウォッチは指摘する。中国を代表するIT企業、アリババ集団はウイグル族をターゲットにした顔認識ソフトを開発、ネット大手、騰訊控股(テンセント)の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」は当局に代わり利用者を監視下に置いていると人権団体に非難されている。

日本の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は中国の人民元建て国債への投資を見送ると報じられた(日経新聞)。報告書によると、GPIFは今年3月末時点で、アリババに25.7億ポンド(約3900億円)、テンセントに22億ポンド(約3300億円)を投資している。

香港ウォッチは各国政府に対し世界に共通するESG基準を確保する法律を制定すべきだと提言している。少数民族への「人道に対する罪」やジェノサイドに加担する中国企業を特定して投資禁止を含む金融制裁や、サプライチェーンの中に強制労働が含まれると合理的に推定できる商品の輸入禁止を求めている。金融業界には「人道に対する罪」やジェノサイド、現代の奴隷制に加担した企業の株には「罪」というラベルをはるべきだと主張している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story