最新記事

BOOKS

人生に本は100冊あればいい──紙の本こそが「速読に適したメディア」である理由とは?

2023年3月1日(水)09時53分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

紙の本が速読に最適な理由

速読するために必須なのは、第一に、全体像を見通せることだ。記者会見に出て、その資料が1枚のペーパーなのか、数十枚にも及ぶのか。手にとったその重み、厚みで、人は読むスピードを調節する。適当なスピードを選ぶ。速読とは、大局判断のことだ。

第二に、行きつ戻りつできること、パラパラできることだ。速読をしていて、キーワードを見つける。そのキーワードは、前にも出ていたか、今後も頻出するのか。資料を繰って見つけだす。速読とは、高速移動のことだ。

したがって、速読にもっとも適したメディアは、紙の本ということになる。手にとって、厚みが分かる。全体像が見渡せる。ページを繰って、瞬時に移動できる。

電子書籍はどうか。のちにも書くことだが、わたしは電子書籍を否定する者ではない。本と、電子書籍とは違うモノ、異なる物体だと言っているだけだ。

電子書籍では、手にとって分かる「本の厚み」はない。全体のうち、いまはどこを読んでいるのか、ページ表示されるものの、それは数字データでしかない。どのあたりに、どんなことが書いてあったか、手で覚えているわけではない。だから、全体像を見渡せない。

人間は、数字だけを取り出して覚えていることはできない。読書とは、人が考えているよりもずっと、肉体的な営みだ。

また、電子書籍は「パラパラとページを繰って、瞬時に移動」することが、きわめて不得意だ。ページをめくるのがもどかしい。

速読というものは、紙の本でなければ難しいかもしれない。手のひらに載せて本がどの程度の厚みがあるのか。一段組みなのか二段組みなのか。いま開いているページが全体のどのあたりに位置するのか。似たようなトピックを扱っている箇所はほかにもあるか。たびたび目次に戻って参照したり、ページを高速度でめくって小項目を探したり。


※後編:2、3冊の同時並行読みを15分──「5つの読書術」を半年続けることで表れる変化とは?に続く


特設サイト:近藤康太郎『百冊で耕す』『三行で撃つ』(※試し読みや関連記事を公開中)


百冊で耕す 〈自由に、なる〉ための読書術
 近藤康太郎[著]
 CCCメディアハウス[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中