最新記事

一帯一路

景気減速の中国、アフリカ向け融資が急減 昨年は2004年以降で最低

2023年9月20日(水)12時10分
中国企業が建設したナイロビの鉄道貨物ターミナル

ボストン大学のリポートによると、中国政府によるアフリカへのソブリン融資(政府保証付き融資)は昨年、総額9億9400万ドルと10億ドルを割り込み、2004年以降で最低の水準にとどまった。写真は2017年5月にナイロビで、中国政府が出資し中国企業が建設した鉄道の貨物ターミナル(2023年 ロイター/Thomas Mukoya)

19日公表されたボストン大学のリポートによると、中国政府によるアフリカへのソブリン融資(政府保証付き融資)は昨年、総額9億9400万ドルと10億ドルを割り込み、2004年以降で最低の水準にとどまった。この10年間にわたりアフリカ大陸のインフラ事業に多額の資金を提供してきた中国の方針転換が鮮明に示された。

中国のアフリカ向け融資の減少は、アフリカの数カ国が債務危機に見舞われると同時に、中国自体も自国経済が逆風に直面している状況下で起きた。

アフリカは中国の習近平国家主席が2013年に提唱した巨大経済圏構想「一帯一路」の重点的な対象となっていた。

ボストン大学のデータによると、中国は2000年から22年にかけてアフリカに総額1700億ドルの融資を実施した。だが融資は16年をピークに大きく減少。21年に調印された融資契約は7件のみで総額12億2000万ドルにとどまり、昨年に調印された融資契約は9件だった。

リポートを共著したボストン大学の研究者、オインタレラド・モーゼス氏は、この2年間は新型コロナウイルスのパンデミックに加え、他の要因も影響していると指摘。融資減少の「多くは、リスクエクスポージャーの水準と関係している」と述べた。

アフリカ各国の政府は大方、中国の融資とインフラ事業を歓迎する一方、西側諸国は中国が貧困国に持続不可能な債務を負わせて借金漬けにしていると批判している。

中国から融資を受けているザンビアは2020年終盤、新型コロナウイルスのパンデミック期間中にアフリカで債務不履行を起こした最初の国になった。ガーナやケニア、エチオピアなど他のアフリカ諸国も債務の支払いに苦しんでいる。

一方で中国は、不動産業界の不振が続き、通貨人民元が下落し、中国製品に対する需要が世界的に低迷する状況下、政策当局者は景気のてこ入れに苦戦するなど国内で独自の問題に直面している。

モーゼス氏はアフリカ向け融資の減少に「中国の国内経済が大きく影響している」と語った。

アフリカ向け融資の大半に関与してきた中国の国家開発銀行と輸出入銀行は、国内経済を支援するよう方針を転換する一方、海外向け融資の多くは自国に近い市場に振り向けられる見通しだ。

ただ、融資の減少は必ずしも、中国のアフリカに対する取り組みの終了を意味するわけではない。

ボストン大学の研究者は、5億ドルを超える融資が減少するとともに社会と環境への影響をより重視するという傾向は、質の向上と環境への配慮を強めた「一帯一路」へ向けた中国の姿勢を反映していると指摘。モーゼス氏は「こうした動きが(中国とアフリカの)関係の大きな部分を占めており、中国の貸し手からは依然として関心が寄せられると思う」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中