最新記事
社会

「理解できない人」を侮辱しない...「泣き寝入り」しない人たちを批判するのではなく、リスペクトを

2023年11月24日(金)17時18分
flier編集部

ブレイディみかこ氏

ライター・コラムニストのブレイディみかこ氏(flier提供)

──自分が賛成できない人に対してのリスペクトはポイントになりそうです。イギリスでのリスペクトのあり方に違いはありますか。

イギリスでは、わからないことをわからないなりに尊重しようとしたり、よくわからない人でもあの人はああいう人だとリスペクトを持って接していこうというところがあると思います。

私が保育士の資格をとったときには、どんな赤ちゃんでもリスペクトしなさいと教えられました。人間として生きる権利を持って生まれてきた人なんだからリスペクトしないといけない。子どもを子ども扱いしてはいけないということもよく言われました。対等な立場の、自分と同じ一人の人として、扱わなければいけないと。

日本では所有にこだわっている人が多いような印象を受けます。この本でも、史奈子は所有からなかなか逃れられません。人が持っているものを勝手に直して住んだりしちゃいけないでしょ、といったことにいつまでもこだわっています。

物質的なものだけではなく、家父長制も所有の意識に基づいている。女性や子供は男性が所有するものであり、だからこそ食べさせなくてはいけないという、トップダウン的な文化がすごく強い。所有しているからこそ自分が上だと捉えているところがあると思うんです。

日本はとにかくそういうトップダウンの力が強すぎて沈んでいて、ボトムアップで下から上に向かう力がない感じがします。子どもに関して言えば、読み聞かせひとつとっても、日本では体育座りをさせて、まず読んで聞かせてから、最後に感想を言わせますよね。イギリスでは基本の姿勢はあぐら。読み聞かせの途中での子どもの発言も歓迎しますし、会話が盛り上がれば最後まで読めなくてもいい。相手を自分と同じように生きている対等な存在として、声をあげさせるというのもリスペクトですよね。こういう文化がイギリスにあるから、声をあげることに抵抗感がなく、そうする人が多いのではないでしょうか。

これは、泣き寝入りしなかった人たちの物語

──Focus E15 の活動は今も続いているそうですが、占拠事件から時間が経った今ではロンドンの住宅事情や活動に変化はありましたか。

日本と同じように、ロンドンは今、物価高で問題になっています。今月頭(2023年8月)に出てたBBCのニュースでは、ロンドンでは50人に1人がホームレスで緊急宿泊施設に住んでいると。50人に1人ってすごい数字ですよね。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー

ワールド

焦点:中国農村住民の過酷な老後、わずかな年金で死ぬ

ワールド

アングル:殺人や恐喝は時代遅れ、知能犯罪に転向する

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中