最新記事

教育

日本のビジネススクールは行く価値があるか?

2018年3月20日(火)15時25分
松野 弘(千葉商科大学人間社会学部教授)

早稲田大学にも日本トップクラスの経営大学院があるが mizoula-iStock.

<そもそも日本企業はMBA取得者を厚遇しないという問題もあるが、世界標準のビジネスマネジメント能力を学ぼうとしたとき、米国と日本どちらのビジネススクールに行くべきだろうか>

少子高齢化、ICT化、グローバル化といった社会変化の激しい環境の中で、ビジネスパーソンがどのように自分のキャリアを形成していくかということがきわめて重要になってきている。というのは、こうした社会変化に対応して自らのスキルを磨いていかなければ、ビジネスパーソンとして生き残ることができないからだ。

まず、一般的にサラリーマン人生にとって、入社から最初の10年間(22~32歳)は経験の蓄積、つまり、仕事を覚えることが基本だ。次の10年間(32~42歳)は仕事の発展期である。これまでの仕事上の基盤に立った上で、自由に自らの戦略的展開ができ、最も仕事がおもしろい時期である。

ちょうどこの時期に、大手企業であれば、海外研修や海外留学をする機会を与えられることが多い。とりわけ、グローバルな競争が企業の将来に大きな影響を及ぼす現代にあっては、世界標準のビジネスマネジメント能力を身につけることは現代のビジネスパーソンにとって必須事項である。

では、そのためには、最先端の米国の経営大学院(ビジネススクール)に留学しなければならないのか。それとも、最近増えてきている日本のビジネススクールでも十分なのだろうか。

例えば、金融関係(銀行・生命保険・損害保険等)であれば、本人の英語力さえあれば、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、コロンビア大学、ノースウェスタン大学、スタンフォード大学等の米国の超一流ビジネススクールに進学することが可能だ。

こうした大学院には、世界の政府機関の若手官僚等が留学していることも多く、そうした人々との交流はもちろんのこと、世界各国の実業家の御曹司等と友人になることも多いようである。

楽天を創業した三木谷浩史氏(一橋大学商学部卒業)は日本興業銀行(現みずほ銀行)から、2014年にローソンの会長からサントリーホールディングス社長に転身した新浪剛史氏(慶應義塾大学経済学部卒業)は三菱商事から、それぞれハーバード大学のビジネススクールに進み、経営学修士(MBA)を取得している。

超一流のビジネススクールで学び、そこで人的ネットワークを広げてきたことが彼らのその後の人生に大きな影響を与えたことは確かである。

ビジネススクールの現状――日本と米国の場合

企業活動のグローバル化に伴って、日本企業においても、海外の大学を卒業した学生を新規に採用したり、外国人を積極的に雇用したりと、年々グローバルに対応できる社員の増加をはかっている。

こうした状況を反映してか、日本企業の社員も国内外のビジネススクールへ自費で入学する人たちが多くなってきているようである。

現在、日本のビジネススクール(MBA、アカウンティング・ファイナンス、MOT〔技術経営〕の学位を取得できる大学院)の数は国立・公立・私立大学等を含めて約100校程度とされているのに対して、米国のビジネススクールは約600~800校程度となっていて、圧倒的に米国のビジネススクールのほうが多いのが実態である(金雅美「日米ビジネススクールの現状と課題」・和光大学総合文化研究年報[東西南北2015])。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中