最新記事

メンタルヘルス

部下が適応障害? 過重労働・パワハラ・悪しき人間関係を調整するのは上司の仕事

2021年3月4日(木)17時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
メンタルヘルス

taa22-iStock.

<適応障害の外部要因(ストレス要因)の調整は、医師など第三者にはできないこと。「特別扱いはできない」などの言い訳は許されないと心療内科医の森下克也氏は言う。対処しなければ、法的な責任まで問われかねない>

適応障害とは、どういう病気なのか。部下が適応障害にかかってしまったとき、その兆候が見られたとき、上司は一体どう行動すればいいのか――。

「職場のうつ」と呼ばれることもある適応障害。約30年にわたってその治療に当たってきた心療内科医の森下克也氏は、『もしかして、適応障害?』(CCCメディアハウス)を当事者向けに上梓。そしてこのたび、その続編的な位置付けとなる『もし、部下が適応障害になったら』(CCCメディアハウス)を世に出した。

適応障害には、家族や友人など、当事者以外にも多くの人が関わっており、なかでも職場の上司の果たす役割が計り知れないほど大きいからだ。

具体的な事例も紹介しながら、分かりやすく書かれた『もし、部下が適応障害になったら』から、ここでは一部を抜粋し、3回に分けて掲載する(この記事は第3回)。

※抜粋の第1回:部下が適応障害? 親身に相談に乗り、仕事を減らしてあげるのが良い対応とは限らない
※抜粋の第2回:適応障害で多いパターンは、相当悪化してから、あわてて心療内科を受診すること

◇ ◇ ◇

外部要因をいかに調整するか

第2章で述べたように、適応障害の外部要因とは、職場環境に生じている直接のストレス要因です。この外部要因をいかに調整すべきかは、組織内にいる上司としてのあなたが最も力を発揮できるところです。と同時に、医師など組織外の第三者が介入するのは困難な部分です。

適応障害の患者さんの全例に言えるのが、その調整がほぼされていないということです。過重労働、長時間勤務、パワーハラスメント、悪しき人間関係が軽減されることなく漫然と続いています。

なぜ調整が行き届かないかと上司に問うと、おそらく「忙しいから」「みんな我慢していること」「特別扱いはできない」「人員にゆとりがない」などと答えます。たしかに、その通りで、その答えに偽りはないでしょう。

しかし、本当に調整が不可能なのかというと、決してそうではないはずです。なぜなら、業務の遂行が困難になった患者さんに、「適応障害」の病名とともに「軽減勤務が望ましい」といった一筆を添えると、たいていの組織は調整に向けて重い腰を上げるからです。

外部要因の調整が実行されない理由として、次の項目が挙げられます。

①部下の状態への認識が不足している
②調整のために割く労力の余裕がない
③そもそも調整しようという意識がない

ほかにも挙げればきりがありませんが、大枠としてはこの3つだろうと思われます。そして、先の問いへの答えとして聞こえてきた数々の上司の言葉は、これらを覆い隠す言い訳にすぎません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

債券ファンドへの資金流入額、21年7月以来最大=B

ビジネス

当局調査の金融機関名、調査終了前の公表を英中銀総裁

ワールド

フィリピン、中国外交官の追放要求 「悪意ある情報」

ワールド

アングル:米のイスラエル武器支援停止、4月の首脳会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 4

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中