最新記事

BOOKS

佐久間宣行が「正しいことが的確に書かれている」と唸った1冊の本

2023年1月8日(日)16時50分
朴順梨(ライター)

20saibook20230108-1-pic2.jpg

Photo:遠藤 宏

理由について検証することで、失敗は失敗じゃなくなる

――同じ時代に私もテレビ制作の現場にいましたが、当時はハラスメントの嵐でしたよね。それでも続けてこられたのは、なぜだと思いますか?

『ずるい仕事術』という本の中では当時のことを結構マイルドに書いていますが、確かに、本当にあの頃はハラスメントが横行してました。だから結構早い段階で、「自分にはこの戦い方は向いていない。このままだと潰れるだけなので、潰れない戦い方を編み出そう。それでダメなら辞めよう」って思ったんです。

僕が大学時代に入っていた広告研究会って、学生サークルなのに会社組織みたいな感じだったんですよ。そういうものに向いていないと20歳の時に気付いて、挫折を味わった。だから言ってみれば、一度絶望している分、失敗に対する耐性があった。

会社の言いなりになっていたらメンタルを病むことや、自分が我慢できないものは何かについては学生時代から分かっていたので、それを徹底的に避ける方法は何だろうかと。

このあたりの戦い方については自分の本でも書きましたが、『20歳のときに知っておきたかったこと』にも近いことがいくつも書かれていたので、すごく共感したんです。

――『20歳のときに知っておきたかったこと』の中で、「これって自分の思いと同じじゃん!」と思った部分を教えてください。

まずは第1章の「スタンフォードの学生売ります」に書かれている


・もっと大切なのは、失敗も受け入れるべきだということでしょう。じつは失敗するからこそ学習することができ、それを人生に活かしていけるのです。進化が試行錯誤の実験の連続であるように、最初は失敗をするのがつねで、つまずくことも避けられません。

・成功の秘訣は、何か試すたびに、どれだけ教訓を引き出し、その教訓をもとに次の段階にすすめるかどうかなのです。

という部分です。

失敗って、その理由について検証していくことで、失敗じゃなくなるんですよ。人は失敗をするから、若いうちは失敗を織り込んだ上で行動して検証していけば、次に活かせるようになる。そうなると失敗は失敗ではなくなるので、ここにすごく共感しました。

ほかには、第6章の「行く手の乱気流」に、実際に仕事で失敗したゲーム会社の社員がゲームのキャラクターになりきって、クレームを寄せた1人1人にお詫びの手紙を書いたエピソードが印象深かったです。

彼はエンジニアは最初から完ぺきではないこと、でも決して諦めないと書き、失敗のもとになった図面と新しい図面の両方を添えたんです。

そうすることでクレームというマイナスの経験は、会社にとっても顧客にとってもプラスの学習機会になった、とあるんですが、失敗したから終わりじゃなくて、逆にブランディングに活かせたことが面白いなと思いました。

――実際に佐久間さん自身も「これは使える」と思ったエピソードはありますか?

第7章「絶対いやだ! 工学なんて女のするもんだ」の中に、


・情熱とスキルと市場が重なり合うところ――それが、あなたにとってのスウィート・スポットです。そんなスポットを見つけられたら、仕事がただの生活の糧を得る手段ではなく、仕事が終わった後に趣味を楽しむのでもなく、仕事によって生活が豊かになる、すばらしいポジションにつけることになります。

と書かれています。

仕事をしていく上で、情熱とスキルが市場と折り合う部分はすごく大事だと思います。伊集院光さんから聞いたんですが、伊集院さんがかつて師匠から「いくら時間をかけても何とも思わないようなこと、それに社会性を足せば、その先も生きていける」って言われたそうなんです。

スウィート・スポットってそれに近いんじゃないかな。「短い単語で言語化していて、すごい!」と思いましたね。



『新版 20歳のときに知っておきたかったこと
 ――スタンフォード大学集中講義』
 ティナ・シーリグ 著
 高遠裕子 訳
 三ツ松 新 解説
 CCCメディアハウス

 ※アマゾンはこちら
 ※楽天ブックスはこちら
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

佐久間宣行のずるい仕事術
 ――僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた』
 佐久間宣行 著
 ダイヤモンド社

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

海運マースク、第1四半期利益が予想上回る 通期予想

ビジネス

アングル:中国EC大手シーイン、有名ブランド誘致で

ビジネス

英スタンチャート、第1四半期は5.5%増益 金利上

ワールド

トルコ製造業PMI、4月は50割れ 新規受注と生産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中