最新記事

性的暴行疑惑

「ハウス・オブ・カード」の米俳優ケビン・スペイシー、7日に出廷へ──セクハラ、性的暴行疑惑とアーティストの関係とは

2019年1月7日(月)18時00分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

ケビン・スペイシー演じるフランク・アンダーウッドの巨大な絵を掲げた「ハウス・オブ・カード」のセールスイベント(2016年2月、米サウスカロライナ)

数々の映画やネット・ドラマで、名優として高い評価を受けてきた米俳優ケビン・スペイシー。2017年秋、何件ものセクハラ・性的暴行疑惑が明るみに出て、そのキャリアは一気に停止状態となった。

スペイシーは米ネットフリックスの人気ドラマシリーズ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」で主役を演じていたが、複数の疑惑が持ち上がったことでネットフリックス側は撮影を中止。すでに撮影を終えて公開の一歩手前だった映画「ゲティ家の身代金」では代役を見つけ、スペイシーの出演部分は撮り直しとなった。

疑惑発覚後、公の場には姿を現していないスペイシーは、昨年12月24日、「ハウス・オブ・カーズ」で演じた「フランク・アンダーウッド」として心情を吐露する動画を公開した。フランクは権謀術数を駆使して大統領にのし上がる冷酷な男という役柄だ。
▽動画「Let Me Be Frank」(「正直に話させてくれ」と「フランクにならせてくれ」の二重の意味がある)

サンタクロースの絵柄が入ったエプロンを身に着けたスペイシーは、キッチンで洗い物をしながら次第に凄みを増す目つきと声音でこう語りかける。「自分がやっていないことに対して、犠牲を払うつもりは全くない」、「証拠もないのに、最悪の行為を信じたりしないだろうね?」、「事実を確かめずに結論に飛びついたりするなよ」。

「フランク」という役柄を通じて自己弁護をしたかのようなスペイシーだが、自分の心情を伝えるためにドラマの登場人物の姿を借り、いかにもの作り声で語るスペイシーの姿には気味悪いものがあった。彼にとって、「素」を出すことはそれほどつらいことなのか。

ネット上では、「いつまでも支援する」という好意的なメッセージとともに、「気味悪い」「やめたほうがいい」という声もたくさん寄せられた。

動画が公開された日、米マサチューセッツ州の検察当局は、10代の少年に対する強制わいせつ・性的暴行容疑でスペイシーを訴追したと発表した。

今月7日、スペイシーは同州ナンタケットの裁判所に罪状認否のために出廷する。スペイシー側は本人が直接出廷することを回避するための書簡を送っていたが、裁判官はこの願いを拒否した。

疑惑の概要

本人の出廷にまで及んだ事件は、2016年に発生したとされる。

スペイシーは、テレビのニュース番組の司会者だったヘザー・アンルー氏の当時18歳の息子に、ナンタケットにあるバーでアルコール飲料を飲ませたという。マサチューセッツ州で飲酒が許されるのは21歳からだ。その後、酔わせた息子のズボンに手を入れ、股間をまさぐったという。2017年11月、記者会見を開いた母は、涙を浮かべながら一部始終を説明し、警察に被害届を出したと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中