最新記事

不動産

韓国ソウル、マンション平均価格が9億ウォン突破 全国でも9カ月で25%も上昇、文政権への怒り広がる

2021年4月12日(月)11時44分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

ソウルの高級住宅街、江南のマンション群。NicolasMcComber - iStockphoto

<韓国ソウルと釜山の両市長選挙では与党が惨敗。敗因に挙げられる文在寅政権の住宅政策の失敗とは?>

今年初めに不動産経済研究所が発表した統計によると、昨年の東京都23区の「分譲マンション平均価格」は、前年比5.8%アップの7,712万円だったという。

2017年に7000万円台を突破した都内のマンション価格は、東京五輪の開催やコロナ禍で通勤時間を短くするため都心回帰の流れもあり、全体的に盛り上がりを見ている。一方で東京五輪の終了後、生産緑地の80%が指定解除され宅地として売り出されることによる供給過剰、いわゆる「2022年問題」も迫っており、都内のマンション価格は今後大きく変動するとみられている。

一方、こちらも高騰が続いているという韓国のマンション価格はどうだろうか?

ソウルのマンション価格は東京の1.4倍

韓国不動産院統計によると、今年2月のソウル市内マンション価格の平均は9億382万4000ウォン(約8千8百万円)と、初めて9億ウォンを突破し話題となった。

また、全国統計でも上位20%のマンション価格が、この3月に史上初の10億ウォンを突破し、大きく報道された。史上初!という冠が付くと、何やら大ごとのように感じてしまうが、実は2020年6月には、上位20%が8億ウォンを突破したと話題になったばかりなのである。さらに、その4カ月後の10月には9億ウォンを記録。1年も経たないうちに、25%も上昇したわけで、韓国のマンション価格高騰がどれだけ急激なものか想像いただけるだろう。

その一方で、韓国の全国統計の下位20%は、2013年ごろから多少上がったり下がったりしたものの、1億1000万ウォン台で横ばいを続けている。上位20%が10億ウォンを突破した3月の時点で、下位20%の平均価格は1億1599万ウォンだった。つまり、上位と下位の格差も史上最高となってしまったのだ。

住宅価格が結婚にも影響

このような急激な変化は、国民のライフスタイルにも大きな影響を与えている。

日本同様に出生率の低下が問題視されている韓国だが、婚姻率自体が大きく低下している。韓国統計庁によると、「韓国年間婚姻数」は、2010年の32万6104組に比べ、昨年2020年は21万3520組と3割以上も減少してしまった。

理由を探るため、韓国女性家族省が発表したアンケート「結婚を躊躇/もしくは、しない理由」を見てみよう。これは、昨年15歳から39歳の韓国人男女1万101人を対象に行われた調査結果である。

結婚しない理由として、「結婚後の新居準備などの費用」と答えたのは、女性が8.5%に対し、男性はなんと20.5%と2倍以上の大きな差がある。この回答は、男性側の理由で第3位だ。これには韓国の結婚準備にまつわる男女の役割が関係している。

一般的に韓国では結婚する際、新居を男性が、家財道具を女性が準備する習わしがある。筆者の友人の30代韓国人男性も、最近彼女と結婚するために、これまで貯めたお金と両親からの援助を受け、ソウル近郊の住宅地に中古マンションを購入したそうだ。ソウル市内のマンションはさすがに高くて手が出せないので、隣の市に引っ越すことになった。通勤時間はこれまでの倍はかかるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米大統領選、バイデン氏とトランプ氏の支持拮抗 第3

ビジネス

大手3銀の今期純利益3.3兆円、最高益更新へ 資金

ワールド

ニューカレドニアの暴動で3人死亡、仏議会の選挙制度

ワールド

今年のユーロ圏成長率、欧州委は2月の予想維持 物価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中