最新記事

ワクチン

米・進むワクチン義務化と分断。7人に1人が「接種か否か」で友情にヒビ?

2021年9月22日(水)16時00分
安部かすみ

ブロードウェイも1年以上閉鎖されていたが、ワクチン接種カードで携帯者は観劇できる 2021年9月14日 REUTERS/Eduardo Munoz

<ワクチンの義務化が今後世界単位で進んでいくことが予想されるが、接種派と接種しない派の双方の分断はますます深まりそうだ>

新型コロナウイルスのワクチン接種完了者が人口の55.4%止まりになっているアメリカ(今月20日現在)。伸び悩む接種数への対策として、接種の義務化が着々と進められている。

ニューヨークは先月より、接種完了者のみ屋内飲食と施設の利用を許可する施策を、都市として全米で初めて開始した(今月13日より罰則化)。

義務化は連邦単位でも進められ、バイデン政権は職員への義務化に加え、100人以上の従業員がいる民間企業に対しても同様の方針を示している。また20日には、外国人の入国についても接種の義務化を発表した。これまでは未接種でも入国が認められてきた日本では「未接種者への締め付け」とする論調が目立つが、アメリカでは「(接種さえ済めば)入国できなかった国からも入国を認める」というポジティブ面にフォーカスする論調が目立つ。

友情問題にも発展

当然、義務化には反ワクチン派からの反発も強い。接種か否かについてはワクチンの配布が開始して以来デリケートな議論が交わされる中、時に友情問題にまで発展しているようだ。

マーケティングリサーチ会社のワン・ポールが今月2日、1000人を対象に行った調査では、ワクチン接種を巡って友情にヒビが入っているケースもあることもわかった(TODAY)。

新型コロナが感染拡大し始めた昨年3月以降「(1人のみならず)3人ほどの友人関係を断った、終わらせた」と答えたのは16%だった。そのうち66%の人々はワクチン接種済みで、17%は接種予定のない人だった。さらに接種を受けた人の14%は、関係を絶った友人というのは予防接種を受けない、受けたくないと表明した人だと答えた。

ワクチン接種済みか否かにかかわらず、友人関係を終わらせた理由はほかにも「嘘をつかれた」「元彼を寝取られた」「変な噂を立てられた」など様々な要因があるようだが、「異なる政治的見解を持っているから」(16%)という理由があげられているのも、何ともアメリカらしい。

アメリカでは、ワクチン接種と政治的思想は関連深く、未接種者および重症患者の多さは共和党寄りの州で顕著だ。同調査でもワクチン接種完了者は、民主党員の81%、共和党員の64%、無所属の69%などと、ワクチン接種率は民主党員の方が多いこともわかっている。

接種済み派vsしない派、進む分断

そもそもワクチンと友情関係については、俳優のジェニファー・アニストンが以前、雑誌の「インスタイル」で「ワクチン接種をしていない友人たちと距離を置いている」と語ったことが注目された。このような意見はセレブのみならず、アメリカでは普段の会話で聞こえてくることも珍しくない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国関連企業に土地売却命令 ICBM格納施設に

ビジネス

ENEOSHD、発行済み株式の22.68%上限に自

ビジネス

ノボノルディスク、「ウゴービ」の試験で体重減少効果

ビジネス

豪カンタス航空、7月下旬から上海便運休 需要低迷で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中