最新記事

自己啓発

バカに悩まされ説教しようとするあなたもバカ「価値観の違う相手に方言で話すようなもの」

2023年5月8日(月)18時00分
マクシム・ロヴェール(作家、哲学者) *PRESIDENT Onlineからの転載
仏像

*写真はイメージです Ekkaphan Chongchiteua - shutterstock


わかり合えない相手にはどんな態度で接すればいいか。フランスの哲学者のマクシム・ロヴェールさんは「価値体系が違う相手に説教しても、相手にはわからない方言で話しかけているようなもの。説教すること自体がバカげている」という――。

※本稿は、マクシム・ロヴェール(著)、稲松三千野(訳)『フランス人哲学教授に学ぶ 知れば疲れないバカの上手なかわし方』(文響社)の一部を再編集したものです。

誰でも必ずする「説教めいた態度を取る」本当の意味

バカがしつこいしほどにバカなおかげで、わたしたちは道徳哲学の基本をみっちり学べています。大丈夫です。考えることを楽しめるなら、バカではないと保証できます。

ですから、たとえこの先、この本の内容が難しくなって、みなさんが眉間にしわを寄せることになっても、いわゆる「哲学の喜び」には耐えられるとわたしは信じています。

「哲学の喜び」とは、おおざっぱに言えば、自分の概念を守っている壁を自分で壊すことです。壁を割り、外に出て、新たな領域を開拓しようではありませんか。

ということで、わたしと一緒にこんな仮説を検証してみてください(この仮説はまだ立証されていないと思います)。


《人はバカに説教をする。それは、ストレートな説教でも含みのある説教でも、自分の無能さに対する怒りから出る愚痴である。人はバカに道徳上の義務という概念を当てはめようとする。バカのせいでぼう然としてしまい、どうしたらいいのかわからなくなると、バカを、自分が思う、あるべき姿に変えようとするのだ。つまり、説教にはこんな言外の意味がある。
「わたしは自分の望み通りのふるまいをきみにさせることができないから、『道徳上の義務を守るべきだ』と言っている」》

おそらく、これに対してみなさんからは、「道徳をもちだすのが悪いような言い方だが、道徳を批判するのは違うのではないか」という意見があるでしょう。

「道徳があるから、人は節度を保って共に暮らしていけるのであり、何らかの価値体系を、みんなで守る絶対的なルールにしないと、どうしようもない」と。

さらにそれに対しては、こんな意見が考えられます。

「道徳批判に罪悪感をもつのは、道徳に対する盲信であり、それは必要のない罪悪感だからすぐに捨てていい。ルールに縛られて自主性や改革が妨げられては、どうしようもない」

価値体系としての道徳に敏感なのはいいことですが、それと、今わたしが述べていることは、全く無関係です。というのも、今は説教の話をしていて、まだ道徳そのものの話はしていないからです。

人と人との対話において、ひとりの人間が別の人間に対し(たとえ言外であっても)、説教めいた態度を取るということ。これは、是非はともかく、誰でも必ずすることです。一家のお父さんでも、誠実な女友達でも、逆に、空気を読めない、知ったかぶりな人でも、同じです。

説教に出てくる義務の概念は、相手を言葉で操って何らかの行動をさせることを目的としたもののように思えます。相手には、自分からその行動を取る理由はありません。義務の概念は、話し手にとってはこんな働きをします。


① 自分がその行動を望んでいるという事実が曖昧になる。
② なぜ説教をするような状況になったのか、考えなくてもよくなる。
③ 相手に求めていることに筋が通っているかどうかも、考えなくてもよくなる。

こうして相手を動かそうとしているわけですが、これでは、生産的な対話はできません。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア軍の上陸艇を撃破...夜間攻撃の一部始終

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中